いきさつと開拓

整地

 私の家は住宅地にある三角敷地60坪の中に建蔽率いっぱいに建つ、3階建ての親同居の2世帯住宅です。地下がRC造の2台程おける車庫になっていて玄関前にも2台ほど駐車スペースがあります。
 そのため庭というものがほとんどありません。花壇とか家庭菜園とかには今まで縁がなかったものですから両親は以前、近所の川端の土地を借りてちょっとだけ小さな畑を楽しんでいたこともありました。

 遊べる庭があればいいのに、とは日頃思っていたのですが、両親にも好きなように家庭菜園くらいできるようにしてあげたいと考えていたところ、知人の資材置き場の近くで売りに出ている土地を見つけ、調べたところ都市計画区域外の原野、道路もあり、境界も測量済みで、元の持ち主は相続したけど県外へ移住したため処分したいという物件で、交渉の結果、家庭菜園の残置物の処分料分として2割引の安値で譲っていただくことになりました。

 資材置場や家庭菜園用地としてバブルの頃に分譲された一角で、こういう土地は日本中いたるところにありますが、おそらく10年以上放置されたものと思われ、若干の低木と草むら、そしてパイプ類と貯水用として使っていたであろう浴槽などの処分、傾斜地を平坦にならす作業と土留め工事が必要です。
 売買の契約と権利登記は不動産屋さん経由でしたのでスムースに終わり、取得税等の申告は自分で書類をそろえ行いました。 手続き的なことは登記を含め素人でもネット情報をみながらなんとかできるのではないかと思います。 原野ということもあり、かかる費用なども登記費用や仲介手数料を含め申し訳ないほどの少額です。

 ところで、もちろんですが土地の選択というのはとても重要です。
近頃では「山を買う」なんていうのも流行になっているそうですが、アクセスに時間がかかる場所だと最初のうちは良くても段々と億劫になり足が遠ざかったりします。 冬期間の積雪時に除雪された道もなかったりするのは致命的で、そうでなくても食料の買い出しに不便だったり、今どき携帯電話が通じないとかインターネットができないなどというのは悲しいです。
 自宅から離れすぎず近すぎず、買い物にも不自由しなくて周囲は自然があって、何をするにも法規的な規制をあまり受けない場所が理想なのですがこれは意外と見つけるのに苦労するかもしれません。 当然のことながら自分との相性というか希望するイメージに合っていないといけないわけですがパッと見てピッタリという土地はほとんどないわけで、そこを開拓なり建築なりをして自分にあわせて育てていけるか想像してみるということも必要になってきます。
 さて、手に入れた土地は上の画像のような状態です。傾斜地の原野です。ですから基本的に土地代も安いです。
 これをまず整理しなくてはならないわけですが、とりあえず草ぼうぼうとゴミの片付けからです。草刈り機で雑草を刈り込んで焼却場に運びます。元の持ち主が置いていったブドウ棚や農業用パイプ類や雨水をためていた浴槽、農業用シートなども処分場にトラックで運びます。
 小型のチェーンソーで低木類を切り倒し、薪になりそうな部分を除き、その他はやはり焼却場処分ですが、ここまでで1週間ほどかかりました。
 整地には小型の重機(バックホー)でサクサクと進めます。 こういうことを人力でやるのは無謀です。
 普通の人はなかなか持っていないと思いますが、それなりに危険な面もありますのでお勧めはしませんが、個人的に使う分には資格もいりませんのでやろうと思えばこういう開拓は誰でもできます。

土留め工事

 次に隣地境界との段差に土留めをつくりました。 住宅地などだと一般的にはコンクリートのL型擁壁を並べたり間知ブロック積みをするのですが、周囲の環境に合わせ林道の土留めなどで使われるもっと簡単で安価な丸太組の土留めをしています。
 敷地内に伐採した木があればそれを利用するのですが大きな木は生えていませんでしたので直径12センチ長さ4mほどの松丸太杭を製材所から買ってきて番線と長い構造用ビスで組み上げてゆき上から土をかぶせて転圧します。 土の重みで固定するわけですね。
 この他にもジャカゴと呼ばれる鉄線で作られた籠にゴロ石を詰めたものを並べてゆく工法や、同じ丸太でもスジコウやベンチ工法と呼ばれるようなものもありますが丸太1本で2千円前後ですのでかなり安く上がります。 欠点は丸太なので普通に腐ることですが防腐材を塗布し、腐ったらあとから杭を打ち増しすることにします。
 
 同様に上側の隣地段差にも丸太柵で土留めを行いました。

電気が欲しい

 パナソニックの受電ポールがオークションで半値以下で出ていたのでポチって買いました。仙台まで軽トラで取りに行ったんですが、たまたま仙台にいく用事があったのでついで・・・ということで。 建柱とコンクリート根巻およびサヤ管を通すところまでは自力ですが、私も電気工事士の資格は持っているのですが引き込みはさすがにできないのでいつもの電気工事屋さんにお願いしました。
 電力さんに配電をお願いして電柱を建ててもらいこれで受電OKです。
メインブレーカーとメーターはポールのボックス内ですので、これ以降は自由に引き回しができます。

水が欲しい

 ここまでで敷地の大枠ができたわけですが、家庭菜園をつくるにはまず水が欲しいわけで、前の地主さんのように雨水を貯めてというのは十分な水をいつでも使えないことと飲用にもならないのは面白くないので井戸を掘ることにしました。
 150mほど先には市の上水道が通る道路があったのですが距離が長く費用がかかることと、他人の土地や道路を横断する必要があり手続き的にも面倒だったからです。
 実は[youtube]をみていると、割と簡単な方法で自分で突き井戸を掘る動画がたくさんあり、「これならできる」とタカをくくったわけですが、どうしてどうして・・・(笑)

 単管で突き子を作って塩ビ管をさしてその中を人力で突いてみても粘土と泥が詰まってあがってくるのみ。 それならばと本格的にプロ仕様の突き井戸用の矢じり付き鋼管を重機で叩き込む方式に変更するも9m突いても泥たまり水しかでてきません。 場所を変えること4カ所やりましたがダメなんです。 [youtube]の動画はうかつに真に受けてはいけないということがわかりましたが、将来ここで流しそうめんをやりたい私にとってはこれは大事件でした。

 やむを得ず前に何回かお願いしたことのある井戸屋さんに相談してみたところ、この辺は背後に控える山が小さいために地下水の量自体が少ないのでかなり深く掘らなければ無理・・・と。
 深さもやってみないとなんとも言えないので相談しながら掘ってあげるからとの言葉にのっかって井戸掘りをお願いしました。
 しばらくして井戸屋さんがボーリングマシンを持ってきて設置含め1週間ほどかけてガンガン掘ること、掘りに掘ったり41m! 岩盤突き抜けとうとう水がでました。
 で、お代はいくら? えっ?200万円ですとっ! 無理ぃー

 予算オーバーだったから負けてくれない? 相談しながらやるって言ったじゃない・・とゴネて負けてもらいました。
         教訓:事前に見積もりをとろう。

 当初の小さな菜園とお休み処程度の予定だったのが、大げさにセカンドハウスみたいな話になってしまったのは実はこれで後戻りできなくなったというのが本当のところなのですが、何がきっかけになるかはわからないものです。
 コンクリート製の井戸枠と汲みだしようの水中ポンプ、それに送水ポンプを設置し、電源線をPF管にとおして接続したら井戸は完成です。送水ポンプの先は20ミリの2層管を、冬場の凍結深度を考えると6~70cm以上かなぁと考えながらバックホーとスコップで土中に埋めてゆきます。途中、菜園の中央に設置した立水栓へ塩ビ管で分岐し、畑や芝生用の散水栓とします。 本管は分岐部分でとりあえずプラグ止めとし、後々延長できるようにしておきます。

 これで敷地を整地することと、水が使えるようにすること、電気が使えるようにすることができたので開拓の第一段階は終了です。

人生を楽しむためのミニマムサイズの家