原木丸太をもらう




知人で伐採を仕事にしている人がいたことは以前書きましたが、その方から建築用にと十数本のヒノキと、その他にも伐採して出た原木(杉・ヒノキ・ケヤキなど)を何十本かいただきました。
実はその後、残念なことに病気で亡くなられてしまったのですがチェーンソーの目立てなども教えてもらいまして、私の師匠です。
ヒノキは土台に、その他は板材に製材した他、端材や製材にできなかったものなどは薪にしてあります。
これだけの木を活かさない手はないわけで、山小屋には最初から薪ストーブを導入することにしていたのですが、薪ストーブといっても町場ではほとんど使う機会がありません。 達磨ストーブや時計型ストーブは昔馴染みですが、流行りのガラス張りのストーブはホンマ製作所の鋳物ストーブぐらいしか設置工事をしたことがありません。 実際自分で使ってみなければ良し悪しがわからないのはどの分野でも同じことですから、いろいろ研究することになりました。
ストーブと部材の選定
とはいえ、本屋さんで売っている薪ストーブの本を読んでもなんか違和感半端ないんですよねぇ。
輸入物ばかりで平均5~60万はするようなのですが、原産国の地元で買うと大体その3分の1から5分の1程度の値段らしい話を聞くと、そりゃ途中業者が儲かるから「良いよ・素晴らしいよ」というのであって、儲かるから一所懸命宣伝してるんでしょ、って思ってしまいます。
いつも取引している設備屋さんに聞いても、ストーブ本体で50万、煙突で70万、設置工事で50万、その他諸々で200万ってとこかなー なんて話をするわけです。
輸入業者の輸送費は1台あたり4、5万として、10台のうち不良率10%のリスクコスト、儲けは25%、総代理店の儲けが25%、販売店が25%とるとすると 原価20万円のストーブは最低でも44万円くらいでそれに消費税が入って50万円弱って感じかなー。 当たらずとも遠からじでしょ?
修理パーツの入手などのこともありますし、国産メーカーだったらどうだろう、というわけですが、国内最大手のホンマ製作所のストーブをみると確かに安い。大体、予想する原価に沿った価格帯なのですが鋳物に関しては監修はするものの中国製を持ってきているらしいのでそれもありそうです。
性能的にどうなのかというのが一番気になるところですね。
その他で国産メーカーも色々調べてみたところ、けっこうオリジナリティーのあるものがつくられているようで、面白いです。
面白いです、とはいうものの価格は輸入ストーブに合わせたのでしょうかほとんど下がりません。 まあ、製作工程や性能・内容を見させていただくとこのくらいの金額にしなくては割に合わないんだろうな、とは思います。

で、まずは条件を満たすローコストのほうでやってみようということになり、東京の主に農機具などを扱っていたインテックという会社から購入しました。
条件というのは、建物規模から容量が約10,000kcalくらいで、2次燃焼できて、外気導入可能で、薪の継ぎ足しがサイドの子扉からできることの4点です。 追加で希望を言えばガラス窓面が大きくて火がよく見えることと煙突径が150ミリ、かつ安くてもそこそこ耐久性があること、というものでしたが値段を考えるとそう贅沢は言えません。
現物が届いたので木箱梱包をほどいてあらかじめ準備した煙突位置に設置し、煙突と給気ダクトをつないだのですが、ざっくりした感想は「まあ悪くない」というところで、ホームセンターで売っているようなチープな中華ストーブよりはランクがずっと上がります。 形状的にはドブレに似ていて、まあパクリかなとも思いましたが・・・。
中身を点検して行くと、言ってみれば「中国製」です。 耐火材の仕様が貧弱といえば貧弱、全体を覆っているわけでもなく、断熱されているわけでもなく、窓ガラスへのエアフローもあまり考慮されていません。 一番驚いたのは2次燃焼のための空気ノズル穴が位置決めのためのくぼみは定間隔であったものの背面の耐火材にあいていませんでした。 工場で穴をあけ忘れたのか、改良の結果わざとそうしているのか定かではありません。
しょうがないので自分でその位置に鉄鋼キリで穴をあけます。
出荷前に点検してないのかなぁ? そこらへんが中国製なんですかね。
耐久性はまだわかりませんが、輸入ブランドものの三分の一程度の値段ですから2台買ってもおつりがくるわけですが、結局は使ってみて満足できるかどうかという話になってくるのではないかと思います。
ブランドにこだわって自慢したい人やオーブン料理に活用したい人にはむかないでしょう。
上画像は給気ダクトの取り入れ口です。 ここから下右の画像で床からフレキシブルダクトが出ているのが見えると思いますが、土間コンクリートに埋め込んだ塩ビ管経由でストーブの取り入れ口につないでいます。
ダクトの圧力損失分がありますのでストレートに真後ろの壁を抜いたほうがよかったかもしれませんが、見栄えの点と後壁のタイル壁に穴をあけたくなかったのが理由です。



さて、煙突はといえばこちらもローコストタイプです。
九州のノザキ産業さんの断熱煙突セットを購入しまして、取り付けました。
スライド煙突もふくめ5m長あるのでドラフトは悪くないとは思いますが、抜け具合をダンパーで調整ができるようにあと1本継ぎ足したいところです。
ハゼオリや差し込みジョイントはダメだという人もいますが特に問題は感じません。 曲がりのないストレート煙突としたためか、すす掃除もしやすいですし強度的にも煙漏れのトラブルもなかったのですが、問題は別のところで発生しました。



煙突に雪が滑り落ちてこないように細かく上方に雪止めをつけたので大丈夫だろうと思っていたのですが、一冬過ぎた時点でご覧のようにフラッシングのスカート部分がつぶれてしまいました。
これは屋根面の雪が一度溶けて氷になり屋根全面一体となりじりじりと滑り降りてきたためです。 屋根に雪をためておきたくなかったので滑り落ちるよう、煙突部以外には雪止めをつけなかったのが敗因でした。
2列取り付けていてだめだったので倍の4列にしてみたのですがそれでも雪止めをむしり取りながら屋根上全面が氷の一枚板となって滑り寄せてくるのです。
結局、屋根の軒先全部に雪止めを取り付けることにして、それ以降は事故はなくなったのですが、雪と氷の力というのは大変なものですね。
積雪1メートルで構造計算していますが雪止めをつけたことで場合によっては雪下ろしも必要になることがあるかもしれません。
へこんだスカートは自動車の板金で使う引っ張り出し工具で治すこととなりましたが、予想もしなかったトラブルでした。
ストーブ周りの防火工事についてですが、床はコンクリートスラブにレンガ敷き込み、背面はLGSで石膏ボード壁から離して通気層を作ったうえ、乾式レンガタイル張りとしています。 床は灰で汚れてくるのでレンガではなくだまってタイルにしたほうがよかったかもしれません。
天井の煙突貫通部は通常は鉄板のメガネ板でふさいでいるようですが意外と値段も高いため、火山灰を固めて作られた板で不燃建材の余りがありましたのでそれを加工し、耐熱塗料を塗ったものを使っています。
放射温度計で測ると煙突の表面温度は30℃ちょっとですので問題もなさそうです。
何年か前の建築基準法の改正で火気使用室の内装制限規定が随分変わりましたのでそれに沿ってストーブ周囲の仕上材と離間を決めています。
周囲の耐火仕上げは結構な範囲まで要求されますが、ストーブを後付けで導入する場合、結構雑誌などではそれを無視しているような実例を見かけます。 危なくないですかねぇ・・・ちょっと心配。
ローコストを目指した結果、ストーブ本体と煙突材料で30万ほど、取付施工は自分でやりましたのでかかっていませんが、他に頼めば工賃は材工共で20万円くらいにもなるでしょうか。
外気導入付き中国製ストーブと安い2重断熱煙突でそろえれば原価ってそんなもんかもしれませんね。
小物の話になりますが、定番のストーブの中でピザを焼きたくて鉄筋を溶接加工して五徳を作りました。 五徳の出し入れと、その上にのせる鉄板の出し入れのためのピックアップ棒もセットです。
料理が得意な人はピザ以外にもグラタン、その他のオーブン料理も作るのかもしれませんが、私ができるのは後は焼き芋を作ることぐらいです。
もうちょっとレパートリーがあれば良いのですが、そうなるとストーブのほうも独立したオーブンが付いた調理ストーブが欲しくなってくるのかもしれません。
薪ストーブというのは家の中で火が見える場所ですので暖炉などと同様、デザイン的にも見せ場になるところです。
狭いながらも吹き抜け空間の広がりの中央に位置しますので、ストーブ周りの間接照明にも気を配りました。
LEDのスポットライトですので電気代はそんなにかかりませんからほぼつけっぱなしで過ごしています。
ストーブの置く場所というのは壁際にする場合と、窓際にして外の景色も同時に楽しめるようにする場合がありますが、小さい小屋ですので窓際に置くのはどうしてもスペース的に無理があります。
逆に壁際に設置するのはどうしても解放感がなくなりがちですので対応策として壁際を吹き抜けにしたということになります。
また吹き抜け効果でどうしてもストーブの熱が2階ロフトへまわりますので平均化のためにフライファンを取り付けてあります。
薪のこと



薪はできるだけ買わないで済ませたい、ということで、もともとここに生えていた木を伐採したものや知人からもらった原木丸太などをまず薪にしました。
太目で筋のよさそうなものは薪割台にしたり踏み台にしたりして、その他はチェーンソーで薪サイズに切断します。
薪サイズは売っているものは40センチくらいが多いように感じますが、うちのストーブにはちょっと長すぎるようで、約30~35センチ程度でちょうど良い感じです。あまり短いと積むのに苦労するので1尺(30センチ)は欲しいところですね。 そうはいっても切断時に短いものはでてしまうのですが・・・。
チェーンソーはマキタの1尺クラスで電動とエンジンのものを持っているのですが、取り回しと馬力ではエンジンに分があります。
マキタは何年か前にエンジンチェーンソーから撤退してしまい、バッテリー式のものしか今は手に入らないようですが小枝切りくらいだったらまだしも長時間の丸太切りでは使い物になりません。ただし、エンジン式が故障した場合はアウトで、マキタの営業所に持ち込んでも断られるか新品を買うくらいの見積もりをだされたのでそれ以降マキタは見限ることにしたのですが、後日、近所にアウトドア工具の修理をする方がいて良心的な価格で修理もやってくれるので助かっています。
師匠からは「マキタだったらまあいいけど、プロはスチールかハスクバーナしか使わないな。2年で買い替えるけど。 間違っても中国製はだめだぞ」といわれていたのですが、馬力不足から値段にまけてその後、ハイガーのハイブランドYOTUKAの50ccモデルを買っています。
まさに中国製ですが、癖はあるもののオレゴンの刃とバーがついていて問題なく使えているので自家用には十分かと思います。
欠点といえば若干重いのと、エンジンスタートに失敗するとかぶりやすいこと、エアフィルターカバーの中に引き粉がなぜか入ってくることです。
引き粉の排出構造があまりよくないのかもしれません。かぶるのはプラグを外して掃除すればよいのですが、まあコツさえつかめばスタートに失敗することもなくなります。
自家製で薪を用意するにはせめて軽トラとチェーンソー、まき割り斧&ハンマーくらいは必要になってきますが、そこらへんが安価に薪ストーブを使えるかどうかの分かれ目になってくるのではないかと思います。
ちなみにうちでは運搬は軽トラとユニック付トラックで、荷下ろし後はバックホーのつかみで移動していますが、手での移動は鳶が必須です。 鳶というのは柄の先に引っ掛け金具がついた道具ですが、以前は長いバールを打ち込んで引っ張っていたりしたのですが、これがあるとないとではほんとに大違いでした。
また薪棚は使わなくなっていた鉄製のごみ籠を横に2段積みにしてトタン屋根をかけたものと、垂木で作ったものですが、これはすぐにいっぱいになり、さらに増設することになりました。 1年以上乾燥させておくとなると思った以上に保管の薪棚が必要なようです。



手ごろな丸太が手に入ると薪以外にもいろいろな利用ができて便利ですね。 ちょっとした腰掛やベンチ、階段をつくったりしました。




薪棚のことに戻りますが、ひとシーズンに薪棚3~4つくらいを使うようになると将来使う薪の置き場がさらに欲しくなってきます。
スウェーデン積みのまねごとをしてみたり軒下にラックのようなものを作ってみたりもしたのですが、どうもいまひとつでしたので、玄関前の空きスペースにコンクリートを打って両面薪棚を作ってみました。両面あわせて4間分です。
このコンクリートスラブは将来、倉庫か作業場にする予定でしたがとりあえずのストック場所となりました。
薪割のこと
話は変わります。 今はもらった原木や、建築残材・廃材、それに流木や伐採木の無償配布で手に入れた丸太などを使っていますが、いちいち出来合いの薪を買っていたのでは年間のコストが馬鹿になりません。 もしかすると気軽に焚き火やストーブなんて使えなくなるかもしれません。
薪の調達は薪ストーブを使う上でもしかすると一番に考えなくてはならないことかもしれませんね。
タダでもらってこれる原木の入手は情報網を張り巡らせる必要があります。こまめに知り合いにお願いしておいたり、ネット情報をチェックしておくことになりますがこれは意外と大変なことだと気づかされます。
それと同時に、今までは薪割斧と手斧、ハンマーなどで薪を割っていたのですが、今はいいとしても歳をとって体力がなくなってきたときにこれを続けることができるか、という疑問が出てきます。






そこで薪割機を用意することにしました。
一般的には油圧でシリンダーをうごかして楔を差し込み割る方式が多いようですが、これはけっこう高いものです。電気モーター式だと5万円前後からあるようですが、うちの伯父でも使っていてパワー不足で大きなものは割れないということでした。 エンジン式の割力が十数トン以上のものとなると十数万円から二十数万円、あるいはそれ以上、ということでちょっと手が出ません。
で着目したのがドリル式くさびの薪割機です。
回転ドリルくさびとベンチ軸受け、ベルト車セットが3万円以下で売りに出されていたのと、一家に一台くらいはあると思いますが(ないって)、うちでも使わなくなっていた汎用ロビンエンジンがあるのでこれを利用すればあとは台を作るだけだからです。(なければ中古で1〜2万円前後で買えます。)
またまた[youtube]動画などを参考にしてですが(※井戸掘りで失敗しましたので[youtube]を参考になどすべきではないかもしれませんが)鉄材だけを買ってきて、自分で溶接してつくったのが上の写真です。 材料費は約1万円ちょいくらいかと。
残念ながらセットで買ったVベルトのプーリーはうちのエンジンにはシャフト径が合わず、エンジン側のプーリーだけは追加で買うことになりましたが、少しプーリー径を小さめに変更したため非力な5馬力エンジンのトルクをプーリー比をあげることで大きくすることができたので逆によかったのではないかと思います。
最終仕上は錆止めペイントでグリーンにしましたがこれもプーリーや軸受けの色とマッチして良かったです。
その他工夫したところは、エンジンをフレームの中に入れてできるだけ重心をさげることと、非常に全体の重量が重いため片側だけですが車輪を取り付けて片方を持ち上げると移動が簡単にできるようにしたことです。
(Vベルトをもっと長いものに変えればもっと重心を下げることができたのでしょうが、まあそこは妥協です。)
Vベルトの大まかなテンション調整はエンジンマウントのボルト位置をずらすことで行なっていますが、微調整は軸受にシムがわりに薄座金を挟みこんでいます。
試運転結果ですが、太い丸太でも割れますがたまに節とか材種によって粘るものは噛んで止まることがあります。 その時は突き刺した箇所の上から手斧をハンマーで打ち込むとすぐ抜けるようです。 大径木で最初から無理な気がする時はチェーンソーで縦割りしてからやりますが、いずれにせよ斧で割っていた時と比べると格段に楽に、早くなりました。 斧で飛び散った薪を拾い集める必要もなくなりましたのでそれだけでも作ったかいがありました。
あと一つだけ残っている作業があって、緊急時のストップスイッチの取り付けですが、スイッチ部をNCからNOのマイクロスイッチに交換しなくてはなりませんが、安全のためには必要なことかと思います。

やっとエマージェンシースイッチを取り付けました。
スイッチ自体は中国製の数百円の安物なのですが、届いてみたら中身のプッシュスイッチがNCで押すと切れるというものでした。 購入時の写真では端子が3つ付いていたと思ったのですが違ったようです。
エンジンのキルスイッチはエンジンケースにアースショートさせることでエンジンを止めるというものですから動作が反対です。
しょうがないので中身をNC/NOのマイクロスイッチに交換することにしました。 アルミアングルを小さく切ってそれに取付、押しばねを折り曲げてちょうど良い位置に加工したところなんとかうまく動作してくれたようです。 緊急時以外でも手元にストップスイッチがあるというのはとても便利で楽です。
ファイヤーマイザー


ネットのどこでみたのか覚えていないのですが気にかかっていたことがあって、それが上の画像のファイヤーマイザーという商品です。
髪の毛のような耐火繊維をシート状に固めたもので、ストーブの中に敷くと空気が満遍なく行き渡ることにより、薪の消費が38%燃費向上し、アッシュも減り、ガラスもなかなか曇らない、といううたい文句のものです。
眉唾かな、とも思ったのですがレビューにもそのようなことが書いてあったので買ってみました。
実物は、スカスカの海苔のようなもので確かに髪の毛状の繊維が絡まったようなシートになっています。 大きさはおもったより小さくて火床全面を覆うには全く足りませんので、ロストル部分の上と、ガラス窓近くと2カ所で試してみました。
火をつけて感じたことは完全に火が回る巡行状態になるまでは炉内の煙が非常に多いということです。 燃え方に勢いがなくなり、よく言えばマイルドな燃え方になりました。
ゴーゴーという燃え方ではなくモワーっという燃え方に変わり、炎が長く柔らかくなります。
あとから考えたんですが、着火後炉内の煙の充満がかなり多くなったということは巡行時の2次燃焼するガスが多くなるってことかな、と。
実際、灰の始末はこのシートがあるためちょっと面倒になりましたが、消火後のアッシュの量は従前よりかなり減った気がします。ガラスに付着する煤はあまりかわらない気がしますがタール分は確かに減っているため掃除のハケで撫でただけでほぼ落ちるか、燃焼中に焼き切れてなくなってしまうことが多くなりました。
使い始めてまだ間もないのでもうちょっと様子を見てみたいと思います。
ファイヤーマイザーをしばらく使っているのですが、使い始めは良さげだったのですが、灰がたまってくると目詰まりしてどうも機能が落ちるようで、頻繁な掃除が必要です。
これが万能的に使えるのであればどのストーブメーカーも同じような理屈のものを採用しているはずでしょうから、やっぱりあまり性能が良くないストーブ用のニッチ商品ということなのかもしれません。